コラム

第66回全国高校軟式野球選手権大会レビュー #2

コラム

2年ぶりに開催された高校軟式野球の全国大会「第66回全国高校軟式野球選手権大会」は、北関東代表の作新学院が6年ぶり10回目の優勝を果たして、軟式界の王座に返り咲いた。

今大会を筆者の視点で振り返る。

大会結果

回戦 日程
会場
試合
第5日
決勝
8/30
明石
中京 0-1 作新学院
(作新学院は6年ぶり10回目の優勝)
第4日
準決勝
8/29
明石
筑陽学園 0-11 中京
  8/29
明石
作新学院 4-0 浜田
第3日
2回戦
8/27
明石
松商学園 2-3 筑陽学園
    8/27
明石
中京 7-2 比叡山
  8/27
姫路
能代 0-5 作新学院
  8/27
姫路
松商学園 1-3 浜田
(14回タイブレーク)
第2日
1回戦
8/26
明石
仙台育英 1-2 中京
  8/26
明石
城西大城西 2-8 比叡山
  8/26
姫路
松商学園 2-0 開新
  8/26
姫路
横浜商 1-5 浜田
第1日
1回戦
8/25
明石
広島なぎさ 1-8 松山商
  8/25
明石
筑陽学園 6-2 河南
  8/25
姫路
能代 1-0 神戸村野工
(13回タイブレーク)
  8/25
姫路
作新学院 1-0 札幌山の手

作新学院が中京の大会4連覇を阻止。最多タイ10回目の優勝

北関東代表の作新学院が6年ぶり10回目の優勝を果たした。

史上初の大会4連覇を狙った中京の偉業を阻止。第64回大会でその中京に追い抜かれた全国選手権優勝回数を10に伸ばして、ふたたび並んだ。

決勝は「これぞ高校軟式」と言わんばかりの1-0というロースコアで決着がついた。決勝戦が1-0だったのは第62回大会の中京学院大中京(現中京)対茗溪学園以来、4年ぶり。「スミイチ」だったのは過去15年を遡って1度もなかった。

作新 100 000 000|1 H2 E2
中京 000 000 000|0 H4 E0

決勝まで4連投になった作新学院のエース小林は中京打線を4安打に封じた。試合を通して5度、得点圏に走者を背負う場面があったが、すべてのピンチを冷静に無失点で切り抜けた。

結局、小林は大会を通して34イニングを投げて長打を1本も許さず。さらには一度も連打を浴びないという、神がかり的な安定感だった。

 

【作新学院優勝までの勝ち上がり】

試合 対戦相手
全国決勝 1-0 中京
全国準決勝 4-0 浜田
全国準々決勝 5-0 能代
全国1回戦 1-0 札幌山の手
北関東決勝 6-1 高崎
北関東1回戦 8-1 並木中等
県決勝 10-0 佐野日大 
県1回戦 5-0 文星芸大付

勝敗を左右した「勝ちパターン」の数

スコアをだけを見れば中京が上回っていたのがわかる。ヒットは作新学院が2に対して中京が4、中京が無失策だったのに対して、作新学院は2つも記録している。

ロースコアが多い軟式では「最後にミスをした方が負ける」ということは往々にしてあるが、今回はそのセオリーには当てはまらなかった(中京の初回の失点にはバッテリーミスが絡んでいたが、失策はゼロ)。

では両チームの勝敗を分けたものはなんだったのか。

個人的に大きかったと感じたのが、両チームが手札として持っていた「勝ちパターン」の数だ。

戦前の予想では、作新学院が中京に勝つには「小林投手がこれまで通りゼロで抑えて、ワンチャンスで上げた得点で逃げ切る」という試合運びしか想像ができなかった。そして現実は、正にその通りになった。

決勝戦後のインタビューで、初回に貴重な先制点を上げた朴主将は「あのチャンスしかなかったと思うので、死物狂いでついていった」と話した。朴主将だけではなく、この思いは作新学院全選手の中で共有され、一致していたと思われる。

一方で中京には大会を通した経験によって、いくつかの勝ち方がイメージできた。1回戦の仙台育英戦では1-1から最終回のサヨナラ勝ち、2回戦の比叡山戦は0-2で先行を許してからの逆転勝ち、そして準決勝では筑陽学園を11-0で圧倒しての勝利だった。

だからこの試合も初回に先制点を許したものの、中京の勝ち上がりを見てきた全国の軟式ファンは「このままでは終わるはずがない」と思っていたはずだ。

中京に「まだ大丈夫」という油断があったとも思わないし、ラジオを通して「焦り」が伝わってくることもなかった。ただ、淡々と、気付けば手札がなくなっていた。

中京の勝ちパターンの多さが裏目に出たというよりは、作新学院の「これしかない」という愚直なまでの一点突破が上回る格好になった。

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