2年ぶりに開催された高校軟式野球の全国大会「第66回全国高校軟式野球選手権大会」は、北関東代表の作新学院が6年ぶり10回目の優勝を果たして、軟式界の王座に返り咲いた。
今大会を筆者の視点で、全4回に渡って振り返る。
僅か3ヶ月で全国ベスト16を果たした札幌山の手
今大会、唯一の初出場校だった札幌山の手。この春に元硬式野球部の選手によって結成されたチームとして話題になった。
夏の選手権予選が初めての公式戦でありながら、支部予選では前回優勝の北海道科学大高を撃破。全道大会でも他を寄せつけない力の差を見せた。
全国選手権では1回戦で後に優勝を果たした作新学院と対戦。0-1で僅かに及ばなかったものの対等に渡り合った。わずか数ヶ月で、しかも限られたメンバーでここまで軟式にアジャストできるものなのか……と純粋に驚いた。もちろん、そこには選手たちの努力があったことは言うまでもない。
他の地方なら春からの参戦も可
そもそもルールとしてありなのか?という疑問が浮かぶかもしれないが、選手権大会の開催要項には以下の規定がある。
9.大会参加資格(都道府県および地方予選大会を含む)
日本高等学校野球連盟の制定する令和3年度大会参加者資格規定による。
ただし、令和3年度に硬式野球選手として登録された者ならびに母校を背景としたクラブチーム以外の野球チームに登録または 所属した者は、予選大会および全国大会に選手として出場することはできない。
つまり同年度に硬式野球部の選手として登録されていなければ、選手権大会への参加は全く問題がないのだ。
軟式の北海道は春の大会がないため、夏の予選が初めての公式戦になった。
もし他の地方で同様の取り組みをするなら、春の大会から参加することができる。
初志貫徹と新しい挑戦はどちらも尊い
今回は「試合に出られない選手が活躍できる場をつくってあげたい」という指導者の思いが先にあった。選手としては夏を前に「甲子園」を諦めなければいけない、という苦渋の決断を迫られたが、それでも目標を「明石」に切り替えて、見事にそれを達成した。
最初の目標(甲子園)を最後まで貫くことはとても立派なことで、誰もができることではない。それと同じくらいに、途中で目的地を変更して、限られた時間の中で新しい挑戦をすることに対してもリスペクは払われるべきだ。
今回の札幌山の手の選手からメディアを通して「やりきったので、悔いはない」という言葉が聞けたことが、何よりもうれしかった。
高校軟式野球がこれからも一定の競技水準を保ちながら発展し続けるために、高校野球、高校スポーツという大きな視点での改革が必ず必要になる。
そんな中で今回の札幌山の手はこれからの高校野球のあり方に、ひとつのヒントを与えてくれた。