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【観戦レポ】3校連合(埼玉2位)ー法政二(神奈川1位) 第57回秋季関東高校軟式野球大会準決勝 

レポート
第57回秋季関東高校軟式野球大会 準決勝
3校連合(埼玉2位)- 法政二(神奈川1位)
2016/11/07 上尾市民球場

この記事を書いている2016年11月8日、神奈川1位として秋季関東大会に出場した法政二は決勝で作新学院(栃木1位)を2-1で下し、35年ぶり2度目の優勝を果たした。

決勝では0-1と1点ビハインドで迎えた最終回の9回表、先頭の岸から4連打で試合を引っくり返し秋の関東の頂点に立った。正に今大会の法政二を象徴するような戦いぶりだった。

前日の準決勝でその法政二を苦しめたのが3校連合(埼玉2位)だった。

「連合チーム」。

ひとつの学校単体でメンバーを組むことが出来ない場合に特例措置として認められている。歴史は1997年、高知県の硬式野球、高岡宇佐分校と高知海洋の連合チームが初めて適用されたのが始まりと言われる。

硬式に比べ競技者数が圧倒的に少ない高校の軟式野球では連合チームを見ることが珍しくない。特に3年生の多くが引退する夏以降、1、2年生で試合に臨む秋季大会では多くのチームで部員不足が深刻化する。連合という選択を選ばない(選べない)高校もあれば、この秋の福島のように連合チームでの出場をも諦めなければならないケースも出てきている。

▽この秋の地区大会に出場した連合チーム
(埼玉)花咲徳栄・大宮ろう・浦和ルーテル
(千葉)千葉商大付・日出学園
(神奈川)平塚商・小田原総合・平塚ろう・自修館中等
(東京)都江東商・中央学院
(静岡)浜松商・聖光学院
(和歌山)桐蔭・耐久・串本古座

ちなみに高校軟式野球ファンなら誰もがその名を知る大津(山口)は第56回(2011)、第57回(2012)の選手権に「大津・大津緑洋」の連合チームとして出場(学校の統廃合という事情ではあったが)。廃部前最後の大会となった岐阜国体(2012)では決勝で作新学院を破り有終の美を飾ると同時に、65年の歴史に幕を下ろした。

話は逸れたが、この秋、埼玉で結成された花咲徳栄・大宮ろう・浦和ルーテルによる3校連合チームは埼玉大会で準優勝。関東1回戦で桐生(群馬2位)に4-3、2回戦で拓殖大紅陵(千葉1位)に6-4で勝利し、関東の4強入りを果たした。

純粋に、なぜこの環境に恵まれていない連合チームがここまで勝ち上がることができたのだろうかという疑問を抱き、そしてその答えを自分の目で確かめたかった。

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法政二の先発のマウンドに上ったのは、エースの岸ではなく背番号11の沓澤だった。2回戦の早大学院戦では9回に登板し、早大学院の反撃を封じている。
2回表、3校連合先頭の4番入倉(浦)のレフト前ヒットと犠打で得点圏にランナーを背負うが、6番相馬(花)、7番青柳(浦)を連続三振に切ってピンチを脱する。

すると法政二はその裏の攻撃、先頭の4番岡部が四球で出塁。一死三塁で打席に入った阿部がエンドランを仕掛けるが空振りし三塁ランナーは憤死。先制の機会を逸する。
しかし続く3回裏、一死三塁で1番須川がサードに転がし先制に成功する。

先制点を得た法政二の沓澤。前の試合8イニングを投げたエース岸の負担を少しでも減らそうと、粘りの投球を続ける。しかし5回表、一死から7番青柳にセンター前に弾かれると、続く8番坂田の一塁線への小フライを処理しようとした沓澤はバッターランナーの坂田と交錯。このプレーは守備妨害となったが、暫く立ち上がることができなかった沓澤の投球への影響が心配される。続く9番折原(花)に死球を与えると、1番篠塚(花)がライト線に落ちるタイムリーツーベースを放ち、3校連合が1-1の同点に追いつく。

更に3校連合は6回表、先頭の3番関隆(花)がレフトへツーベースを放つと4番入倉の投前犠打で三塁刺殺を狙った沓澤の送球が大きく逸れてボールが外野に転がる間にランナーが生還し逆転。一死三塁となったところで法政二は沓澤に代わってエースの岸がマウンドへ上る。

その岸、6番相馬に死球を与えピンチを広げると、7番青柳に2打席連続のセンター前ヒットを許し1-3、更に8番坂田にサードに叩きつけられ、法政二は3校連合に3点のリードを与える。

4回から3校連合のマウンドを任された青柳。長身から繰り出される力のこもった投球は荒削りながら法政二の打者に的を絞らせない。しかし3点のリードをもらった6回裏、味方内野陣の連続エラーで簡単に1点を返されると、二死一、二塁で6番阿部にライトに運ばれ1点差、そして藏地の打席で青柳は痛恨のワイルドピッチで4-4。瞬く間に3点のリードを追いつかれる。

こうなると流れは完全に法政二へ。7回裏には四球、野選で一死二、三塁から3番中泉がサードへ叩き逆転、更にここから5番八方、6番阿部、7番藏地の3連続ヒットでリードを3点に広げる。今大会、勝負どころで幾度も見せた畳み掛ける攻撃。途切れない安打で走者が次々とホームに生還、相手を一気に引き離す。この集中砲火は決勝でも炸裂し、完全試合男の作新学院池田をも粉砕した。

鮮やかな逆転でリードをもらった法政二岸は、9回に多少制球が乱れる場面もあったが、3校連合の反撃を許さず試合終了。8-4で逆転勝利を収めた法政二が作新学院の待つ決勝進出を決めた。

3校連合がここまで勝ち上がることができた理由。花咲徳栄相馬のリーダーシップがあり、浦和ルーテル青柳のダイナミックなプレーがあり、大宮ろう坂田の堅実なプレーがあり…。正直な所、これだという答えは見つからなかった。試合中、3校連合の指揮官は「俺達はこの大会ついているから自信を持て」と選手を鼓舞した。ここまで多少の運があったのは事実かもしれない。しかし、運だけでこの舞台にはたどり着けるほど関東大会は甘いものでもない。ユニフォームはバラバラだけれど、彼らは”チーム”になっていた。

各選手がこのチームで戦うことはもうない。関東の頂点というひとつの目標を達成するために集結し、戦い、そしてまた、それぞれのチームに戻っていく。春、夏はもしかしたら、敵になるかもしれない。同じ目標に向かって戦った仲間と、今度は真剣勝負する。それもまた彼らにとってはかけがえのない経験となる。

3校連合(埼玉)
000 013 000丨4
001 003 31X丨8
法政二(神奈川)

(3)坂田、青柳、相馬、小林ー小林、谷脇
(法)沓澤、岸ー八方

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