【観戦レポ】天理(近畿)ー能代(北東北) 第61回全国高校軟式野球選手権1回戦 

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【観戦レポート】
第61回全国高校軟式野球選手権 1回戦
天理(近畿)- 能代(北東北)
2016/08/25 ウインク球場

「天理ー能代」。

1回戦での両者の対戦が決まった時、この試合が大会のハイライトになると思った。一ファンとしてとても楽しみだと思うのと同時に、どちらか一方が1回戦でこの大会を去らねばならないという現実を少し残念に感じた。

天理と能代、伝統校の対戦は予想通り両エースの投げ合いで幕を開けた。



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天理の先発は主将でエースの大瀬。立ち上がりは全国初戦ということで固さもあったが、すぐに本来の投球を見せ始める。エースで主将、近畿大会決勝では自らのバットで全国大会を引き寄せたチームの大黒柱は、この日も湧き出る責任感で自らを奮い立たせる。

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能代の清水は昨年夏の決勝以来の全国のマウンド。1年ぶりに彼の姿を見て感じたことは、まず体が一回り二回り大きくなったということだった。試合開始前の投球練習を力を抜いた楽なフォームで緩くこなす姿は1年前と変わらない。そして球審からプレイが宣告された瞬間、彼の内にあるスイッチがオンに切り替わる。外角いっぱいに投じたストレートに球場がどよめいた。

1年前の決勝で見た清水はどちらかというと、小気味よいペースで淡々と打って取らせていた記憶があった。今目の前にいる彼は、テンポが良いのは変わらないが、明らかにスピードが速くなっているのがスタンドから見ていても分かる。清水の速球を攻略することは簡単ではない。天理打線は相当苦戦すると確信した。

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しかし。天理の各打者はその140km/hを超えると予想される直球を序盤からしっかりと弾き返した。

上位から下位まで最後まで鋭く振りぬくスイングは相手が誰であろうと変わらなかった。初回からランナーを出して清水に多くの球数を費やさせる。

清水を早めに援護したい能代打線は3回表、先頭の鈴木琉が中前ヒットで出塁、二死二塁として2番丹波が三遊間を破りレフト前に運び、走者が本塁に突入するもレフトからの好返球でタッチアウト。能代は先制のチャンスを逃す。

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天理は4回裏、4番水﨑のヒットと四球で二死一、二塁とするも後続が続かず。

5回表、鈴木琉がこの日2本目のヒットで出塁、二死二塁で打席には清水。持ち前の豪快なスイングでレフト前に運ぶと二走の鈴木琉が生還。待望の先制点は清水が自らのバットで手に入れる。

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先制を許した天理打線は引き続き、清水をじわじわと攻め続ける。6回表、エラーとヒットで無死一、二塁のチャンスを作るが、ここは清水の真骨頂。後続を冷静に打って取り、天理の攻撃の芽を摘む。

天理大瀬は7回表、能代安倍、鈴木琉に連打を許し二死二、三塁のピンチを迎えるも、先にタイムリーを放たれた清水を力のこもった投球で三振に仕留める。しかし8回表、先頭の丹波にレフト線を破るツーベースを放たれると犠打で一死三塁とされる。ここで天理の4番大塚の叩きが三塁線ピッチャー前の小フライトなる。これを大瀬が必死に捕球にいくも届かず、三塁ランナーが生還し、能代が大きな2点目を上げる。試合は決したかー。

しかしここで大崩れしないのが大瀬。続く安井を5-4-3のダブルプレーに打ち取り、味方の反撃に期待する。

すると8回裏の天理の攻撃。一死から3番長瀬が内野安打で出塁。4番水﨑がこの日3本目のヒットで続くと二死一、三塁で板倉知がセンター前に弾き、まずは一点。続く新田のサードゴロが相手エラーとなり、天理が終盤に2-2の同点に追い付く。

試合は9回で決着が着かず延長に入る。

能代清水の疲れの表情が色濃くなる。しかし、ここぞで繰り出す直球の球威は延長に入っても変わらない。

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天理大瀬は気持ちで投げるも冷静さを失わない。周りもエースの意地の投球を盛り立てる。

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試合は延長13回から、今大会2度目のタイブレークに突入する。

タイブレーク制度
第60回大会から採用された。延長12回を終えて同点の場合は、延長13回から無死一、二塁の状態で試合を始め、以後のイニングも同様となる。

延長13回の攻撃は各チームとも任意の打順から始めることができ、14回以降試合が続く場合、打順は前のイニングの続きとなる。

<延長13回表>
能代は3番工藤からの打順を選択
3番工藤:サードへの送りバント成功 一死二、三塁
4番大塚:四球(敬遠)
5番安井:レフトにヒット性のライナーを放つ。これを天理レフト水﨑が落ち着いて捕球、ツーアウト。ここで飛び出した三塁走者が必死に帰塁するも水﨑の送球が早くダブルプレー。天理が13回表を0に抑える。球場の雰囲気は天理に傾く。

<延長13回裏>
天理は1番松本からの打順を選択
1番松本:ピッチャー前の送りバント成功 一死二、三塁
2番大瀬:四球(敬遠)
3番長瀬:セカンドゴロ 能代セカンド田中が落ちついてホームに送球、フォースアウトでツーアウト。
4番水﨑:セカンドゴロ スリーアウトチェンジ。能代も13回をゼロに抑えサヨナラのピンチを凌ぐ。

<延長14回表>
6番田中:田中の打席の時、二走の大塚が飛び出し二三塁間で挟まれタッチアウト。一死二塁。一邪飛で二死二塁。
7番安部:スリーアウトチェンジ 能代はまたも無得点

<延長14回裏>
5番堤:ピッチャー前の送りバント成功、一死二、三塁
6番板倉知:四球(敬遠)
7番新田:セカンドゴロ。またも田中が落ち着いてホームに送球、フォースアウト。二死満塁。
8番植田:初球を振りぬいた打球はセンター前に抜ける。三走の水﨑がサヨナラのホームイン。

終盤に2点差を追いつき逆転勝利を収めた天理が、優勝候補の能代との激戦を制して準々決勝進出を決めた。

天理打線は劣勢の中、終盤まで味方エースの投球を信じ、決して焦ることはなかった。清水に球数を投げさせ、じわじわとスタミナを消耗させることで、終盤の同点、そして、延長14回のサヨナラタイムリーへと繋げた。140km/hを超える直球にも決して振り負けなかった。

打球がセンター前に抜け、天理の三走水﨑がサヨナラのホームを踏むのを眺める能代の清水の表情に悔しさはなかった。
1年前の夏、2年生ながらエースとして臨んだ全国大会。決勝まで上り詰め準優勝投手となった。新チームは秋、春と県大会を突破ず、迎えた最後の夏。北東北代表の座を勝ち取り全国大会に帰って来た。そして1回戦で敗退。再び、明石のマウンドに立つことは叶わなかった。
清水が抱え、そして対峙したプレッシャーは本人にしか分からない。しかし、それまで守り続けたマウンドをゆっくりと降りる彼の表情に、何か大きなものから開放された安堵感のようなものが見えた気がした。

2016年の夏、清水大智はグラウンド上で一瞬たりとも笑顔を見せないまま、1回戦で全国の舞台から去った。

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