中京が12年ぶりの全国制覇 3度目の正直、作新の壁破る
日本一のチームを決める試合は、日本一ドラマチックな幕切れだった。
29日、兵庫県の明石トーカロ球場にて、第56回全国高校軟式野球選手権は決勝を迎えた。2年ぶり9度目の優勝を目指し作新学院(栃木)と、12年ぶり5度目の日本一を目指す中京との決勝戦は、作新が1点リードで迎えた延長11回裏、2死1,2塁から中京4番、山内のセンターオーバーツーベースで2人が生還しゲームセット、劇的な幕切れで、中京が1999年以来の日本一を決めた。作新先発、大塚は最終回、二死ランナーなしのところまで追い詰めたが、中京の驚異の粘りにあと一つのアウトを取ることができなかった。
予想通りの0行進
好投手によるハイレベルな戦いになるほど、軟式は点が入らない。戦前から観衆、関係者、記者、その多くが0行進、1点勝負を予想していた。試合はまさにその通りの展開。3人の豊富な投手を擁する作新にあって、今大会をほぼ一人で投げ抜いてきた背番号4のエース大塚と、昨年の全国ベスト4を経験し、今大会準々決勝では、大会史上2人目の完全試合を達成した中京のエース、下田との投げ合いは、10回までスコアボードに0が並んだ。お互い攻めきれない展開というよりかは、お互い、攻めにかかるのを、両投手を始め、鍛え抜かれた守備陣がはるかに上回る「攻めの守備」によって封じる展開が続いた。
攻めの守備が功を奏す
7回、作新は1死満塁の先制のチャンスを迎えた。ここで中京のベンチを含めたナインは、「この時」のために用意した作戦を発動する。大きくリードした二塁ランナーをキャッチャー森川は見逃さなかった。ウエストボールを要求すると、すかさず誰もカバーしていないはずのセカンドキャンバスへ送球。そこにいたのは、なんとセンターを守る近藤だった。意表をつかれた作新二塁ランナーは戻り切ることが出来ずタッチアウト。温め続けた奇策が、ここ大一番で見事に的中した。中京はこの大ピンチをゼロで抑える「攻めの守備」を貫いた。
遂にほころんだ「完全守備」
1つのミスが勝敗を分ける。ミスをした方が負ける。そんなシビアな戦いは11回、遂に動き出す。作新は2死1、2塁からファーストフライを弾いた相手のミスに乗じ、遂に先制のホームベースを踏む。先にその守備がほころんだのは、これまで危なげない守備を見せてきた中京だった。準々決勝で完全試合を達成した下田が試合後に「バックのおかげ」と語った「完全な守備」が、ついにこの場面で崩れてしまった。「ミスをした方が負ける」。その言葉が痛いほど現実としてのしかかる。いよいよ作新の9度目の優勝が現実味を帯びてくる。
そして最後まで攻めた中京に与えられた結末
失点を許し迎えた11回裏、中京の攻撃。先頭打者、次打者と簡単に打ち取られ2アウト。ベンチには下を向く選手、半ば諦めかけた選手、涙を流す選手。過去2度乗り越えられなかった作新の壁。今年もやはりその壁は高かった。多くが作新の勝利を確信した。そんな中、逆転サヨナラ優勝へのシナリオが動き出す。下田の投球を受け続けた2番森川は四球を選ぶと、3番センター近藤は初球を果敢に叩きセンター前ヒット。首の皮一枚繋いだ中京の迎えるは4番は山内。その2球目、外のカーブを振り抜いた打球は、センターの頭上を超えた。奇跡は起き、ここに最高のシナリオが完結した。
2006年、2008年、中京は2度、この決勝の舞台で作新を越えようとした。2006年は押し出しの1失点に泣いた。2008年は延長15回、引き分け再試合を戦い勝ちきれなかった。どうしても超えられなかった。ここぞという時に点が取れなかった。守備のチームが打撃のチームを超えられなかった。そして今年。中京はその自慢の守備を、更に打撃でカバーした。守備でも攻めの姿勢を崩さなかった。「攻め続ける勇気」が12年の時を超え、中京に5度目の優勝旗を引き込んだ。奇しくも前回、その優勝旗を手にしたのは当時チーム主将の現監督、平中選手。監督5度目の夏にして、止まった時間がついに動き出した。
作新のマウンドを最後まで任された、背番号4の主将、大塚は最後まで正真正銘チームの主将だった。今大会、これまで無失点で決勝まで進むと、この日の決勝は5回まで被安打0。例年以上の打力を擁する中京を完璧に抑えた。勝利を意識した11回裏、悪夢の2失点が今大会許した唯一の失点だった。しかし、ここまでの彼の活躍、そしてチームの牽引役に対し、仲間の誰もが感謝の思いを抱いているに違いない。記憶に残る4番をつけた大エースが最後までマウンドで戦い抜いた。
■29日の結果
▽決勝戦
作新学院(北関東/栃木)
000 000 000 01 ◆ 1
000 000 000 02 ◆ 2
中京(東海/岐阜)
(延長11回)
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