2022年4月10日、全国選手権の開催地・兵庫県明石市の泉市長が以下のようなツイートを行いました。
残念ながら『明石球場』についても、
県は「廃止」に“方針転換”しています。
私もビックリしました。
全国の軟式野球大会の聖地なのに、
どうして大切にしないのか、との思いです。
知事が代わり「明石公園にはお金をかけない」方針の
ようですが、明日、知事に尋ねてみたうえで、
また報告します。 https://t.co/L2TpJfm2Ti— 明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ) (@izumi_akashi) April 10, 2022
このツイートを見て、「え、明石がなくなるの?」と不安に感じた方も多いと思います。
この記事では改めて、明石公園野球場(明石トーカロ球場)の現状を確認します。
そもそも明石公園とは?
明石トーカロ球場がある明石公園は、兵庫県が所有する「県立公園」です。
現在は(公財)兵庫県園芸・公園協会が指定管理者として運営しています。
明石城跡の開園は1883年(明治16年)にまでさかのぼり、現在の県立公園は1918年(大正7年)に開園しています。
第1野球場(明石トーカロ球場)は1949年に完成し、1972年に最初の更新(建て替え)が行われました。
その後、1981年に全国高校軟式野球選手権大会の主会場になりました。
「明石廃止」の経緯
今回の騒動の背景を確認しておきましょう。
兵庫県は2016年に「兵庫県立都市公園の整備・管理運営基本計画」を策定し、10年間にわたって兵庫県にある全ての県立公園(全15公園)の整備を進めています。
その基本計画を受け、2021年には、より具体的な整備計画に落し込んだ「兵庫県立明石公園リノベーション計画」がまとめられました。
そして、この計画の中で、公園のスポーツ施設については「短期的には修繕及び改修を行うことで長寿命化を図ることとし、中長期的には、施設の改廃を含めて検討する」とされています。
この「改廃を含めた検討」という記載が、今回の明石廃止騒動の発端となりました。
明石公園第1野球場(明石トーカロ球場)の課題
先のリノベーション計画の中で、第1野球場(明石トーカロ球場)の課題としては
- 県大会等に観客席数が対応出来ていない
- 築 49 年を経ており、内外装、設備等の老朽化が著しい
- 高校野球等の秋季大会時等、夕刻の延長戦に対応出来ていない
と挙げられています。
球場全体の収容人数は12,000人ですが、スタンドには4,300人ほどしか入れません。
現状は残念ながら、軟式の全国選手権では「余裕のあるキャパ」ではありますが、硬式の公式戦では、人が溢れかえっている光景を見かけることがあります。
ちなみに軟式の全国選手権史上、もっとも観客が押し寄せたと思われる、2014年夏はこんな感じでした↓↓
また築50年で内外装や設備の老朽化が著しいことや、ナイター設備がないため、夕方の延長戦に対応できない、といった課題があります。
課題に対する対策
これらの課題に対して、リノベーション計画では、2021年から4年間かけて
- スタンドのリニューアル
- 内外装のリニューアル(スコアボードを含む)
- (ブルペンの拡張)
を順次行っていくとしています。
また、ここが重要なのですが、現状のリノベーション計画では「耐用年数経過後は、施設を更新せずに明石城跡を活かした整備を検討する」と明記されています。
これはつまり、リニューアルを行い、球場の延命措置は行うけれど、その耐用年数が過ぎたあとは建て直しはしない、ということになります。
例えば現在のスコアボードは1999年から2000年に設置されたようですので、ざっくりとした耐用年数は20年から25年となります。
要するに、この20〜25年というのが、明石トーカロ球場の現状における「余命」とも言えるのではないでしょうか。
明石市長と兵庫県知事が協議
冒頭のツイートがなされた翌日の4月11日、泉明石市長と兵庫県の斎藤知事の間で初の会談が行われました。
会談の後、泉市長は以下のように報告しました。
要望としては、
①『陸上競技場』の改修と、②『明石球場』の存続と、
③『県立図書館』の充実化などを強く迫った。
知事からは、いずれも”前向きな対応“を
約束していただいたと、私としては受けとめている。
引き続き、県に声を届けていきたい。
次につながる『初協議』にはなったとは思う。 https://t.co/UYPHVRKmGV— 明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ) (@izumi_akashi) April 11, 2022
知事からは明石球場の存続について「前向きな対応を約束していただけた」としています。
今後も継続して議論されていくと思われます。
観客席の一部使用中止が決定
また4/27、兵庫県は明石トーカロ球場のスタンドの約4割の使用を中止すると発表しました。
今回のスタンドのリニューアルのために県が現状の確認をしたところ、満席時にはスタンド上部の強度が不足することがわかったとのことです。しかし直ちに倒壊する恐れはないとのことです。
- 観戦可能席数はメインスタンドが2,270席→850席、サイドスタンドが1,940→1,520席、合計2,370席に
- 期間は当面の間(年単位での対応が必要との声もある)
23〜25年度の大規模工事の施工が決定
2022年10月、斎藤兵庫県知事は定例会見で、23年度から明石トーカロ球場の改修工事に着工することを発表しました。
リノベーション計画からは少し後ろ倒しになったものの、23年度から大規模なリニューアル工事が行われることが決まりました。
ちなみに工事期間中も試合を開催できる予定とのことです。
まとめ
現状をまとめておくと以下のとおりです。
- 明石トーカロ球場は2025年度までにスタンドと内装・外装などの大規模なリニューアルを行う
- 現状の計画では、修復によって延長した耐用年数が過ぎたあとの、施設の更新は行わない
- 今後も球場の存続については協議されていく
- 当面の間、スタンドは4割減の2,370人が入場上限に
つまり、今すぐに明石トーカロ球場が廃止されるということではないので、少しは冷静になってもよいと言えます。