【中京学院大中京vs崇徳】「中京野球」で掴んだ史上2校目の三連覇。中京学院大中京が3年連続10回目V 第64回全国高校軟式野球選手権

レポート

58年ぶりの大記録は、過去から紡がれた「中京の軟式野球」によって達成された。

序盤からペースを掴んだ中京学院大中京の水。強打の崇徳に対して、上位にはこれまでの試合と比べるとより慎重な投球で球数をかけながら向かっていき、下位打線にはストライク先行でテンポよく投げ込む。最初の打者一巡で6奪三振。5回を終えて、四球を2つ与えながらノーヒットピッチング。

崇徳の高井は初回から毎回の四死球で走者を出すが、落ち着いて無失点で試合を進めた。4回表は、二死から連打で1、2塁になるが、ここは女房役の堀内から二塁へ矢のような牽制で切り抜ける。前半を終えて0-0。予想通りの試合展開で後半戦へ移る。

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そして中京学院大中京は、準決勝のあべの翔学戦と同じく、グラウンド整備が明けた6回に勝負に出る。崇徳の高井が無死から三輪、村瀬に四球を与えると、一死後に暴投で1、3塁に。5番岡田が一発で叩きを成功させ、三走の村瀬が気迫のヘッドスライディングで生還。続く水もセカンドゴロを放ち、ホームへの悪送球を誘って2点目、桂川もファーストゴロ、3連続内野ゴロで3点目を上げると、早川のセンター前タイムリーで水が生還し4得点。準決勝に続く6回の一挙得点でこの試合も均衡を破る(中京学院大中京 4-0 崇徳)。

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6回裏に前良に初安打を許した水は、7回裏、5点リードとなった場面で崇徳の反撃に遭う。ヒットと四球で出した走者で二死2、3塁になると、8番朧谷がセンターに弾き返して2人が生還。水が今大会32イニング目にして初めて失点を許す(中京学院大中京 5-2 崇徳)。球数もいつもより多く、さすがに疲れの表情が見え始めた水は、それでもエースとしてマウンドに立ち続ける。8回裏にも寺岡にヒットを許すが後続を断つと、5-2のまま、9回裏の最後のマウンドへ。5番から始まる崇徳の攻撃を一邪飛、投ゴロと仕留めてツーアウト。中岡に2-2から投じた7球目、バットが空を切ると、これまで感情を表に出さなかった水がマウンド上で雄叫びを上げ、エースを中心に歓喜の輪が生まれる。同校としては初の、史上2校目となる全国選手権3連覇を達成。単独最多となる10度目の頂点に立った。

スクリーンショット 2019-08-31 22.06.17.pngスクリーンショット 2019-08-31 22.06.32.pngスクリーンショット 2019-08-31 22.06.48.png

※球数は目安

崇徳は初優勝には届かなかったが、学校の歴史を塗り替えた。エースの高井は、6回表の失点のきかっけになった連続四球が悔やまれるが、最後まで気迫のこもった投球を見せた。意気消沈してしまいそうな失点にも崇徳は諦めることなく、7回裏に非常に意味のある2得点を上げた。3点差に迫って相手にプレッシャーを与えたこの得点は、中京学院大中京にとっては全国選手権で12試合ぶりに喫する失点ともなった。ここまで強打で勝ち上がってきた今年の崇徳が、最後に残した爪痕。上位から下位まで、どこからでも点が獲れる「崇徳史上最強」の名に相応しい、素晴らしいチームだった。

6回表にヒットなしで3得点。「中京学院大中京の軟式野球」で三連覇は達成された。相手からもらったチャンスは、ただでは逃さない。一死3塁をつくったら確実に決め、そして、相手の反撃の余地を残さずに突き放す。準決勝、そしてこの決勝でみせた「6回の攻撃」は圧巻で、そして脅威だった。

今年の守備も本当に堅く、4試合で失策ゼロ。ミスをしたら負ける軟式野球で、誰もが優勝を認める立派な数字だ。そして、今回の優勝の立役者となったエース左腕の水。7回に崇徳に反撃を許すも冷静な投球は貫いた。これまでとはレベルが違った強力崇徳打線に対して、散発4安打。長打は1本も許さず、11奪三振の力投だった。背番号1をつけた春から、試合ごとにチームとともに成長を続けた左腕。優勝後の場内インタビューでは、自分のピッチングよりもチームの勝利についてコメントを優先した真面目過ぎる水は、僅か数ヶ月で中京学院大中京を名実ともに高校軟式界の王者に導く大エースになった。

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